3月21日(日)11:00〜11:45 開催レポート
コロナの感染予防と認知症予防は両立させないといけません。コロナ禍でも行える科学的根拠(エビデンス)の得られている認知症予防の具体策を紹介しました。
出演者
日本認知症予防学会理事長 浦上克哉氏
講演レポート
浦上克哉氏<日本認知症予防学会理事長>
認知症予防に最も大切な早期発見・早期治療。コロナ禍で実現していくために
3月21日(日)のテーマのひとつが「コロナ禍における認知症予防」です。講師にお招きしたのは、日本認知症予防学会 理事長の浦上克哉さん。前編に引き続き、後編では軽度認知障害予防の重要性と鳥取県での取り組み、認知症発症後の予防についてお話を伺いました。
鳥取県での取り組みで実証された、MCI対策の重要性
正常と認知症の間、移行状態の認知症予備軍のことをMCI(軽度認知障害)と言い、認知症予防においては非常に重要なフェーズとされています。MCIからの認知症発症率が非常に高い一方で、適切なケア次第では進行を留められ、正常に戻るケースすらあるからです。
浦上さんは、鳥取県琴浦町にて「もの忘れ検診」と題した認知症予防プログラムを長年実施してきました。機器を用いたスクリーニングを複数回行い、MCIに相当する結果の方には予防教室を案内します。
予防教室では、驚くべき結果が得られました。3ヶ月間の予防教室の実施後、 MCIが認知症に移行することなく、年単位で進行を抑制できていたのです。
予防教室の結果を受けて更に研究が進んだ「とっとり方式認知症予防プログラム」では、下記のプログラムを取り入れています。
・運動: 有酸素運動と筋力運動をバランス良く、ストレッチも追加
・座学: 認知症に関する知識・理解を深める
・知的活動: 手先を使うゲームなど
「とっとり方式認知症予防プログラム」でも同様に認知機能の改善の効果が実証され、現在は全国レベルでの展開を検討しているといいます。
適切な薬物治療や本人視点のケアで、認知症の重度化を抑制する
認知症発症後の重度化を防ぐには、何をすればよいのでしょうか。
繰り返しになりますが、認知症の予防には、フェーズに関わらず早期発見・早期治療が最も大事です。
早期診断のメリットのひとつに、服薬による進行抑制があります。
目に見えるパッチタイプであれば、家族も服薬管理がしやすく安心です。
しかし、服薬だけでは予防は不十分です。本人の気持ちを尊重するケアを取り入れましょう。認知症になると、どうしても出来ないことがあります。脳の海馬の萎縮により、新しい記憶を保持できなくなってしまうからです。認知症の本人が出来ること・得意なことに注力していられるよう、あくまで苦手な部分のサポートに努めるのがベストです。
また、認知症の人の家族も「第二の患者」。ケアが必要なのです。介護による負担や不安から、家族が心身ともに追い詰められてしまえば、認知症の本人も辛くなってしまいます。公的なサービスを利用するなど、リフレッシュする時間を設けましょう。
コロナ禍の新しい生活様式においても、認知症を予防していくうえで必要なこと
新型コロナウイルスの流行により、今までとは異なるかたちで認知症予防に取り組まなければならなくなりました。
人同士の接触が避けられるコロナ禍で推奨されるオンラインの活用は、高齢者には扱いが難しい面もあります。より親しみやすい、手紙や活字も利用してみましょう。しっかりと感染予防をしながら対面でのコミュニケーションの場・機会も設けていきたいものです。
コロナ禍に関わらず、常に認知症に関する最新の情報を得ることは重要です。
是非、日本認知症予防学会にもアクセスしてみてください。