3月20日(土)16:00〜16:40 開催レポート
認知症の人が悔いなく生きる為に、ご家族や地域の人が正しく向き合うために、認知症の真実をお伝えしました。
講演レポート
松村美由起氏
<東京都女子医科大学附属成人医学センター東京都地域連携型認知症疾患医療センター長>
もし、自分が、家族が認知症だったら?
東京女子医科大学附属成人医学センターは、渋谷区を担当する東京都指定の認知症疾患医療センター。
ここに勤務する松村美由起先生に、「認知症の真実」について聞きました。
「まず、想像してみてください」と松村先生。
たとえば、一緒に行く約束をした覚えがないのに、「デパートに行く時間30分くらい遅れちゃいそう」と友人から電話がかかってくる。
しまったはずの鍵や財布が見当たらず、一日中探しものをしている。
買い物へ行って、すでにある豆腐をまた買ってきてしまう。
こんなことが、くり返しあなたに起こったとしたら、どうしますか?
また、家族に起こったとしたら、どうしますか?
自分に起こっても、家族に起こったとしても、きっと困惑すると思います。いま、世の中にあふれる認知症の情報は玉石混淆とも言えます。「認知症を正しく知ることが大事」として、まずは自分ごととして認知症をとらえてみましょうと、松村先生は言います。そして、そのためには厳しいこともお伝えします、と。
認知症とは、ずっと進み続ける脳の病気であり、生活に必要なさまざまな脳の働きに障害があらわれる症候群。その結果、生活に支障をきたすことになります(ICD-10という病気の診断基準による)。
記憶障害、注意障害、遂行機能障害(目的のために計画したことができない)、失語、失行、視空間認知障害(空間の位置関係が悪くなったり、道に迷ってしまうなど)、社会的認知機能の障害(人の表情から状況を把握することが難しくなるなど)、症状としてこれらがあげられます。※ただし、ほかの病気でも似たような症状をきたすことがありますので、あてはまる症状がある場合は専門医を受診してください。
目をそむけないで、向き合って
脳の病気である認知症。高齢になればなるほど、脳に複数の病気が起こるので、その診断は難しいと言います。
認知症と言ってもさまざまな種類があります。
なかでも一番患者が多いと言われる「アルツハイマー型認知症」を例に話は進みます。
「残念ですが、病気は進み続け、元に戻ることはありません」
認知症の発見が遅れると、言葉通り症状は進行する。
逆に早期に発見ができることで、その後の人生を自分で選択する時間が長くなる。
認知症が進んでしまうと、自分で意思決定をすることが難しくなってしまいます。
自分の人生なのに、自分で舵取りができなくなってしまう。
松村先生は言います。
「目を背けずに、早く向き合ってほしい。あなたの明日をあなた自身の望む通りにおくるために」
「一生懸命生きたいんです」
認知症の治療薬もあります。「コリンエステラーゼ阻害薬」は、病気に侵されていない健康な脳の部分を活性化させ、残った機能を高めてアルツハイマー型認知症による生活機能の障害を緩和させる薬です。
病気を治療して治すことのできない認知症。薬を飲むよりももっと大切にしていることがあると、松村先生は言います。「認知症になっても、その後の生活について一緒に相談すること」
認知症になったご本人は、困っています。今までどおり生活したいのだけれど、わからないことやできないことが増えていくので困っているそうです。
松村先生がこれまで向き合ってきた患者さんのなかで、こう言った方がいました。
「それでも、一生懸命生きたいんです」
専門の相談員がいる松村先生の病院では、患者さんが望む生活を一緒に考えています。困りごとがあったら、まずは相談することが大切です。
お問い合わせ先
東京都女子医科大学附属成人医学センター
東京都地域連携型認知症疾患医療センター
TEL 03-3499-1917