地域で支える現場から

3月20日(土)13:00〜13:45 開催レポート

地域で支え合う仲間は繋がっていきます。今回は、地域活動に関わる区民のみなさまと家族介護者のみなさまをお招きして、現場からの声をお届けしました。

出演者

たんぽぽカフェ 中島珠子氏ほか

講演レポート

中島珠子氏<たんぽぽカフェ代表>

認知症を正しく理解し、地域全体で支え合う街を目指して

「共生」と「予防」をテーマに、認知症になっても住みやすい街づくりを目指す渋谷区では、2021年も「認知症なっても展」を開催。4日間のオンラインイベントを通じて、認知症についての情報発信の場を設けました。

3月20日(土)のテーマのひとつが「地域で支える現場から」です。「たんぽぽカフェ」代表の中島珠子さんをはじめ、地域活動に関わる区民の皆さんと家族介護者の皆さんからお話を伺いました。

仲間や支援者の存在を知ってほしい。若年性認知症の本人・家族に適切なケアを届けるために

中島さんは、「たんぽぽカフェ」、「café マリエ」という2つのオレンジカフェの代表を務めています。渋谷区内に22箇所あるオレンジカフェは、認知症の方や家族だけでなく、地域の方全員に開かれた気軽な集いの場です。医療・介護の専門職スタッフへの相談も出来ます。

まだ働きざかりで若年性認知症と診断されると、本人・家族双方が大きな不安を感じるものです。「café マリエ」のような集いの場以外にも、相談窓口や若年性認知症デイサービスといった専門サービスも是非頼ってみてください。

池田和巨さんと清田信夫さんのおふたりには、若年認知症の家族の介護についてお話をしていただきました。

介護生活の大変さのなかで、地域の人たちのサポートや、同じ悩みを持つ仲間同士のつながりが支えになっているそうです。

65歳未満で発症する若年性認知症は、高齢者の認知症とは異なる理解・対応が重要です。

しかし、必要な人に十分な支援や情報が行き届いていない現状があります。介護する家族の負担の軽減も課題です。

本人・家族同士の支え合いだけでなく、周囲から支援していくためにも、地域の人たちが理解を深めていくことは欠かせません。

人と人とのつながりが、人生を豊かにする。支え合う地域コミュニティづくり

配信の後半では、専門的な支援の前段階として、地域に根ざした支援活動を行う渡辺孝行さん、佐藤太地さんに登場いただきました。

ケアマネージャーである渡辺さんは、コミュニティカフェの「ほのぼのカフェ ラピス」を運営しています。

渡辺さんは、見守りの目を通して、専門的な支援から見過ごされがちな人の変化や異変をサポートできるような、人と人とのつながりづくりを模索しています。

また、「暮らしの保健室しぶや」というグループでは、新しい生活様式の変化に伴う地域活動を展開。区内の多様な医療・福祉関係拠点同士の交流の場をSNS上に設け、情報提供も行っています。

日本赤十字看護大学大学院の大学院生である佐藤太地さんは、地域の絆のあたたかさを伝える活動に参加しています。

「しぶやオレンジガーデングプロジェクト」では、認知症啓発のシンボルカラーであるオレンジ色の花を栽培し、支援の存在を可視化しました。

また、一般社団法人 Ten-Shipアソシエーションの取り組みのひとつ「ささはた まちのお手伝いマネージャー」では、地域の方々のさまざまな生活の困りごとに対応するなかで、頼れる身近な存在の重要性を実感したといいます。

個人化が進み、周囲への関心が希薄になっている昨今だからこそ、より地域支援の価値が高まってきているのです。

ひとりひとりが認知症に関心を持ち、「自分ごと」として捉える

では、私たちが今すぐにできる支援活動はなんでしょうか。

中島さんが紹介した認知症サポーター養成講座の受講は認知症への正しい理解を深めてくれますし、オレンジカフェで当事者の方から話を聞くのも良いでしょう。 インターネットでは、地域だけでなく全国の事例にもアクセスでき、興味のある活動の参考になります。

また、「会社や学校などの身近な場で、認知症について支援したい、理解を深めたい旨を話してみる」(渡辺さん)、「地域に関心・愛着を持つための一環として、散歩をしてみる」(佐藤さん)などは、今日から始められる身近なアクションです。

何よりも大切なのは、接点やきっかけを自分から作っていくこと。地域を支える地域コミュニティを構成するのは、私たちひとりひとりです。「自分ごと」として認知症を捉え、理解・関心を深めていきましょう。