3月20日(土)11:00〜11:40 開催レポート
認知症になったら何もできなくなる訳ではない。新たにできることもある。”はたらく”を通じて得られた自信の回復と+@をライブ配信でお伝えしました。
講演レポート
前田隆行氏<DAYS BLG! 代表>
■本人の意志で選択し活動する
BLGでは、利用者さんのこともスタッフのことも“メンバー”と呼びます。それは、「認知症=介護される人」ではなく、活動をともにする仲間として対等な関係であることを示しています。認知症になったからといって、何もできなくなるわけではありません。当事者の多くは「まだ自分にもできることがある」「社会とつながりたい」と思っています。
BLGのデイサービスは、その日にどんな活動をしたいか、メンバーみんなで話し合って決めます。洗車、コミュニティ情報誌のポスティングなどの仕事のほか、ボランティアや事業所の手伝い(お味噌汁作り、領収書の整理など事務作業など)もあります。すべては「誰かの役に立つ」ことであり、その中からメンバーが自分でやりたいことを選択できます。
BLGの目的は「いかに自分らしく今の生活を継続していくことができるか」です。そのため、昼食の提供はしていません。上げ膳据え膳ではなく、何が食べたいのかを考えて、買いに行くのか、食べに行くのかを自分で決めます。
■「役に立つ」喜びが自信の回復につながる
VTRではBLGの一日に密着。メンバーが自分のやりたいことを主体的に選び、自由にそして楽しみながら活動している様子が紹介されました。些細な作業でも「仲間と一緒に仕事をする」という体験を通して、「できた」「役に立てた」という喜びを感じ、自信の回復につながっていることがわかります。
ある男性は、「BLGに来てから、悩んでいるのは自分だけではないということに気づき、前向きになった」と話していました。メンバーが「私たちの楽しみは、BLGに来て仲間に会うこと。それが未来に続いていく。」と笑顔で語っていたのがとても印象的でした。
■少しの工夫が「できない」を「できる」に変える
洗車の仕事をやってみたいと申し出た高齢の女性は、いざ現場に到着すると寒くて「嫌だ」と言いだしました。そこでスタッフは「何が嫌なのか?」を考え、寒いところで冷たい水を触るのが嫌ならば、ゴム手袋をはめて、日の当たる場所で拭き上げの作業をしてもらうことにしました。一人で洗車の作業をすべてやるのはとても大変ですが、仲間と一緒にそれぞれができることを分担すれば、6~7台洗車できます。本人たちは、それを見て「ああ、キレイになったな」「今日もよくやった」という満足感や、「私にも、まだできる」という自信を得ることができます。
現在、BLGではいくつかの企業と協業して、製品の開発や商品のモニターなども行っています。認知症の人が間違えてしまったり、できないことがあったときに、諦めるのではなく、どういう商品にすれば認知症の人でも間違えないかを考えるのです。
■ありのままの自分でいられる場所
デイサービスで大事なのは「本人の想い」です。「家族の想い」でデイサービスを利用すると、本人は「ここは自分の居場所ではない」と感じたり、不満やストレスを募らせることにつながります。
BLGのあるメンバーは「本当の自分を出せる場所があるというのはとても大切なこと」と語っていました。自分の弱さを開示できる。失敗を責められない。仲間がいる。だから、BLGに行きたいと思うのです。現代社会では、素の自分でいられる場所を持っている方は少ないのではないでしょうか。
「100BLG」は、このような場所を日本全国に100カ所作り、認知症であっても社会とつながり、「まだ働けるんだ」「まだできるんだ」という姿を見せることで、認知症に対するイメージを変えていこうというプロジェクトです。それによって少しずつ地域や社会が変わり、新たな風景が見えてくるのではないかと思っています。