Withコロナ時代、今こそ求められる認知症予防
1日目の3月19日(金)のテーマは「知る」。登場してくれたのは、日本認知症予防学会 理事長の浦上克哉さんです。老化と混同されやすい認知症。重度化予防の鍵を握るMCIの対策、Withコロナ時代のこれからについてお話をお伺いしました。
「歳のせいだから」「誰にでもある」で認知症を見過ごさない
認知症と聞くと、みなさんは何を思い浮かべますか。
例えば徘徊は、認知症から誘発される結果で、症状ではありません。
個人差もありますが、本質的な症状はもの忘れです。
認知症の早期発見が遅れる原因のひとつに、老化によるもの忘れと認知症との混在があります。本人だけでなく、家族もなかなか異変に気がつけないものです。「日常生活に支障が生じ、周囲の人に迷惑をかけているか」という大きな違いに留意しましょう。困ったことがあれば、身近な地域包括支援センターや専門医を頼ってください。
MCIの早期発見・対策がカギ。認知症の重度化を予防するには
認知症になる前、まだ症状が軽い状態のことを「MCI(軽度認知障害)」と呼びます。MCIの早期発見・対策は、重度化予防に非常に効果的です。「つい忘れて同じことを何度も尋ねる」「急に出不精になった」などの症状が見られたら、MCIを疑ってください。
現在日本にはおよそ800〜1000万人程度のMCIがいると想定されています。MCIは、3年以内の認知症発症リスクが高い危険な状態。自己判断による放置は避けたいものです。
有効な対策は、認知症になりやすい生活パターンの改善です。
脳機能を活性化するために、
- ・体を動かす運動
- ・手先を動かす知的活動
- ・コミュニケーション
の3つを取り入れましょう。
栄養バランスの取れた食事や、質・量ともに十分な睡眠も心がけてください。
これらの対策は、浦上さんが長年携わってきた鳥取県琴浦町でのプロジェクトでも取り入れられてきたものです。予防の効果が実証され、参加者にも喜んでもらえた経験から、改めてMCIの早期発見・対策の重要性を実感してきたと言います。
認知症を正しく理解し、新しい生活様式と予防を両立させる
新型コロナウイルス流行による外出控えなど、新しい生活様式が求められている現在。認知症の進行に悪影響を与える危険因子が多く、より予防の重要性が高まっています。
支えとなる家族にも、適切な対応が必要です。認知症は、脳の機能が一律に損なわれるわけではなく、誤解を招きやすい症状があります。どうしてもできないことがある、という点を理解しましょう。
長い間、認知症は予防や治療ができない病気とされてきました。しかし、浦上さんが日本認知症予防学会を立ち上げて10年。認知症予防に関する研究・理解が着実に進んできた実感があると言います。
渋谷区は、およそ5人にひとりが高齢者。認知症は、誰しもにとって身近なトピックです。
渋谷区でも様々な取り組みを行っています。是非積極的に参加してみませんか。