認知症の症状が進行しても、自尊心や豊かな感情は保たれています。ステレオタイプの対応ではなく、本来の個性や生きてきた歴史にもとづく「自分らしさ」を尊重されたいと思っています。頭ごなしに否定するばかりではなく、自分の言動を受け入れ理解してほしいと願っています。
「本人は何もわかっていない」は誤りです
認知症の人は「何もわかっていない」と介護者は思いがちですが、それは間違いです。もの忘れが増えたり、今までできていたことができなくなったりする変化に、誰よりも本人が驚き、混乱しているのです。まず、その気持ちをおもいやりましょう。
認知症の症状が進行して、言葉で自分の意思が表現できなくなってからも、年長者としての誇り、子どもや小動物、植物などを慈しむ気持ちなど、豊かな感情は保たれています。
こうした言葉にできない認知症の人の気持ちを介護者はおしはかり、それに寄り添う姿勢が大切です。
「その人らしさ(個性)」を大切にしましょう
「認知症だからこうに違いない」などと接し方を決めつけるのは避けましょう。誰もがそうであるように、認知症の人にも、それぞれに「個性」や、長く生きて積み上げてきた「歴史」があります。認知症になる前のその人の姿も思い浮かべながら、「この人の場合は、今は何を望んでいるだろう」と言葉にできないメッセージをさぐるようにしましょう。
人は「自分らしさ」が尊重されていると感じられる環境であれば、安心してすごすことができるものです。「認知症の人」としてではなく、「その人らしさ」を大切にして接しましょう。
「否定よりも肯定」の気持ちで接しましょう
介護者は、認知症の人の思わぬ言動に戸惑うことがあります。そのなかで、誤りや失敗などがあったときに、強い口調で否定や叱責をしたり、理屈に任せた説得を試みたりすると、認知症の人の罪悪感や孤独感をつのらせてしまうことが多いようです。
まずは、誤りや失敗に対して「大丈夫」と肯定する気持ちを示しましょう。認知症の人が失敗を怖れずに暮らせる環境づくりが大切です。ひとりで介護しようとすると、負担が増えます。周囲の人たちと協力して心の余裕を保ちましょう。